2012年2月10日

異文化交流

シャッターの降りた深夜の薬局前でサトちゃんにくだを巻きたい夜の一つや二つ、誰にだって覚えがあります。

Club beer ウガンダ人とお酒を呑んでいる時の話です。


同僚とか生徒の家に遊びに行くと、よく酒を薦められる。
酒の場は大好きだけど、下戸だし、ローカル酒は強くて不味い。
けど、お誘いををプイと袖にするのは心意気に欠けるし、男がすたる。
ノブレス・オブリージュ(貴族の義務)とまでは言わないまでも、限りなくそれに近い心持ちはありましょう。
紳士たるもの、然るべきときに然るべき振る舞いが求められるのはごくごく当然のことです。
飲もうぜ!と言うのだから、襟を正してゴクリとやりたい。


そして、そこでの話題はきまって、スポーツ、政治、女という酒の肴の三羽烏。
日本で友人たちと飲み明かしている時の話題と大した違いはない。
スポーツが批評であり、政治がスキャンダルであり、女が体験談になるというところまで同じ。

特に恋愛話はみんな大好物。結局、最後はいつも異性の話になる。


「Taka、知ってるか?アルファベットの順番ってのは実は間違ってるんだよ!」
「何で?」
「だって、僕と彼女のイニシャルが遠いじゃんか!」
「・・・・」


「言っとくけど、僕らの愛はビクトリア湖(北海道とほぼ同じ面積)が干上がるその日まで続くぞ!」
「・・・・」


まぁ、愛すべきバカ達なのである。


ただこっちには全く浮いた話がないので、こちらから話題提供ができない。
そしていつもの「ウチの妹 or 娘 or 親戚をもらってけ」攻撃が始まる。

「いつになったら、Takaは嫁を作るんだ!」
「男のくせに料理して、洗濯して、あり得ないだろ!」
「よし、分かった。Takaは帰っていいから、妊娠させてから帰れ!」

合計特殊出生率5.9人(2011年)の国の男たちの口先はハンパない。上野千鶴子に全力で怒られかねない。
ひとしきりヤイヤイとなじられて、フーやれやれと汗をふいたら、また思い出したように「ホントにおまえは」と始まって取りつく島もない。牛の反芻みたいにして、結局4回くらい同じことを繰り返し言われる。 


あまりに悔しいので「昔は俺だって彼女いたさ!」なんて振られた彼女の話を始めたのが、失敗だった。
結局、出会いから別れまで延々と語らせられるハメに
そして、最後の一言。

「その娘、絶対Takaのこと待ってるぞ。俺には分かる。」

こっちも意識がトブくらいまで酔ってたので、
「そうか!そうだったのか!」という具合になり、勢いで数年ぶりに彼女にメール送信。
日本で友人たちと飲み明かしている時の行為と大した違いはない。


【異文化の他者の中に存在する「自分」を発見する】ってことが異文化交流という奴だと思うのだ。
酒の席のみならず、こっちでは幾多の場面でウガンダ人の中の「自分」と出会った。
もちろん慣習や価値観まで全てを分かり合えることはないし、彼らを自分と同一視するつもりはない。
ただ、全く違う文化の中で生きる彼らの中にも自分と同じ普遍性が存在する。
だからこそ分かり合える。それがウガンダで過ごした日々から学んだ事だ。


それにしても。

彼女からはいつ返信が来るのだろうか、サトちゃん。

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