2012年1月26日

そうだ、結婚しよう。④

万事が万事この調子である。文化人類学者であれば「各文脈の裏に潜むブガンダ族の文化的・社会的背景についてうんぬん~」なんて知的好奇心がフル回転しそうなやり取り。ただ、日本のバラエティで育てられた若者からすると、みんなが「結婚式」という状況を利用した壮大なコントをしているようにしか見えない。大げさな身振り手振りで会場を沸かしている司会者の様子を見ると、近からずも遠からず。ウガンダ人の陽気さがそのまま濃縮、反映されているよう。
 また、会場での会話は全て現地語で進められるため、式の進行を完全に理解するには推理小説家の推理と天才詩人の空想力が必要。残念ながらその両方を持ち合わせていない僕は会話の中身を推しはかることを諦め、ただ式の流れに身を任せることにした。


式は新婦の家の子供たちの挨拶へと続く。幼い子供、若い女性、若い男性。
そうだ、結婚しよう。⑨ そうだ、結婚しよう。⑪ そうだ、結婚しよう。⑬



 そして流れでゲスト紹介とあいなり、司会者の口から僕の名前が告げられた。礼儀として立ち上がって周りに会釈をしたものの、司会者からの一言「前に来い」。人を押しのけ聴衆の前に立つと、マイクを手渡される。気づけばいつの間にかまわしを締められて土俵に上げられ、相撲を取らないと許されない状況になっている。仕方なく、僕の全力の現地語を駆使するも、
「私の名前はムビル(現地名)です。」
「教員として科学を教えています。」
「中国人ではなく、日本人です。」
 トホホとしか言いようのないセリフ。この外人の語学力の低さを察した司会者は、隣に寄ってきて現地語での祝福の言葉を耳打ち。僕は腹話術師の人形のように、その言葉をパクパクと語った。失笑と暖笑を頂戴したものの、顔から火が出て炎上し、そのままキャンプファイヤーが始まるくらいの勢いだった。(今後イントロダクションに出席する方は、必ず何か喋らされるので現地語の勉強にぬかりのなきよう)
そうだ、結婚しよう。⑩



両家からの挨拶が終わり、ついに新婦ノエリーンが家の奥から登場。 そうだ、結婚しよう。⑫ 連れ添って出てきた彼女の叔母が新郎を真ん中の座席から誘い出し、父親にこう紹介するのである。

「先日街を歩いていた時のことです。たまたま暴動に居合わせてしまい、警官隊による催涙ガスを浴びてしまいました。目から涙が止まらず、苦しんでいた私に優しくハンカチを手渡してくれたのが、彼なんです。彼はそんな、とても親切な人なんです。」
(物語の一部は完全にフィクションです)

客席を大声で手を叩いて笑わせる程、説得力のあるアグレッシブな新郎紹介。
かけた眼鏡だってずれ落ちないほうがおかしい。

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